大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(ネ)970号・昭31年(ネ)1006号 判決

第一審原告 接待みさほ

第一審被告 小泉勝

〔抄 録〕

よつてまず右賃貸借契約解除の効力の点につき検討する。

成立に争のない甲第四号証(本件土地賃貸借契約証書)には「若し壱ケ月たりとも賃借料の支払を怠りたるときは賃貸借契約を解除し直に土地の明渡を請求せらるるも異議なき」旨特約の記載がある。そして特段の事情の認むべき証拠のない本件においては、右特約の記載を以て直ちに、第一審被告主張のように契約の当初から例文にすぎないと断定することはできないし、また右特約を公序良俗に反するものということはできないから、この点に関する第一審被告の主張は採用しない。

ところで、第一審原告は第一審被告がしばしば賃料を延滞したと主張する。原審証人接待庸夫の証言により真正に成立したものと認める乙第一号証の一ないし三、第二号証の一、二、原審及び当審証人接待庸夫の証言並びに原審及び当審における第一審原、被告各本人尋問の結果によると、第一審被告は昭和二十六年九月分の賃料を同月三十日に、同年十二月分の賃料を同月三十一日に、昭和二十七年三月分ないし五月分の賃料を同年五月三十日頃に、同年六月分の賃料を同年七月八日頃に、同年十一月及び十二月分の賃料を同年十二月三十一日に、昭和二十八年一月及び二月分の賃料を同年三月十九日に各支払つた事実を認めることができるのであつて、他に右認定を左右するに足る確証はない。右認定の事実によれば、第一審被告は右各賃料については支払を遅延したわけであるけれども、他面前掲の各証拠並びに弁論の全趣旨に徴すると、第一審被告は本件土地を賃借以来、賃料はいつも二ケ月分又は三ケ月分を取りまとめて同時に支払つてきたものであつて、賃貸人たる庸夫においてもこのような支払方法について特に警告を発したこともなく推移し、第一審被告が昭和二十六年九月分の賃料を同月三十日に支払い、ここに始めて支払期日を徒過したわけであるが、右九月分の賃料は期限未到来の同年十月分の賃料とともに同時に支払われたのであり、また、その後の前認定の期限後に支払われた賃料の多くは、右同様数ケ月分をまとめて支払つたものの一部であり、賃貸人においても、その都度異議なくこれを受領していることを認めることができる。右認定事実によれば、契約解除に関する前示特約は、契約の当初においては有効に成立したとしても、その後の当事者間の賃料支払の慣行によつて暗黙のうちに改定され失効したものと認めるのが相当であつて、賃料債務の不規則な履行状況が前認定のとおり数回繰り返されたにかかわらず、ともかくも賃貸人において異議なくこれを受領しながら、その後において一回の履行遅滞があれば催告なくして直ちに契約を解除できるとの特約の効果を主張することは、むしろ当事者の予期に反するものといわなければならない。

(浜田 仁井田 伊藤)

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